裁判例2


<事案>

 被害者が,出会い系サイトでメールをやりとりし,その利用料は合計600万円にもなりましたが,結局メールのやりとりをした人と会えることはありませんでした。

 そこで,被害者はメールの相手はサクラ(会員になりすましたサイト側の人間)であり,詐欺であるとして,当該出会い系サイトを運営する被告会社とその代表者に対し,利用料の返還など約600万円の支払いを求めました。

 

<判決>

 裁判所は,「被告会社は詐欺に該当する違法なサイト運営を行っていた。また,その違法行為は同社の営業方針としてなされた構造的・組織的なもので,被告会社の不法行為が認められる。さらに,被告代表者も同サイトの運営行為を推進していたと推認できる。結論として,被告らの共同不法行為として被告各自が連帯して損害賠償責任がある」として約600万円の支払いを認めました。

 

<意義>

 本来,詐欺については,具体的な欺罔行為(人をあざむきだます行為)を被害者(原告)が立証しなければなりません。

 ところが,本件では,被告側が,サイト内部についての情報,特にメールの内容や会員は実在するのかなどを一切明らかにしませんでした。結局,原告の証拠は,原告のもとに残されたメールと,原告が記憶にあることを書いた陳述書だけでした。このことから,被告側は,原告は被告側の具体的な欺罔行為を立証できていないと主張しました。

 しかし,裁判所はこのような被告の主張を認めず,個別的でなく,全体的な考察から,「被告会社は,より多額の利益を得るために,交信相手としてサクラを使用し,サクラに多数の相手方の人格を使い分けさせる,被害者と直接メールをやりとりをせずに,本件サイトのサーバーを通じてメールを交換させるなどの方法で,被害者をして多数の相手方と平行して本件サイトのサーバーを通じて多数のメールのやりとりをさせて,多額のポイントを消費させ,多額の利益を得ていた」という画期的な判断をしました。